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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
三名は、ばばの両手、襟がみを、三方からつかんで、
「その又八を、われわれも追い廻しておるのだが、一体、そちは、何者だ」
返辞の前に、
「何しやるッ」
と、ばばは、怒った魚のように、棘を立てて、彼らの手を振りぎ、
「おぬしらこそ、何者じゃ」
「われわれか、われわれは小野家の門人。これにおるのは、浜田寅之助だ」
「小野とは何じゃ」
「将軍秀忠公の御師範、小野派一刀流の小野治郎右衛門様をしらぬのか」
「しらぬ」
「こいつ」
「待て待て、それよりは、このばばと、又八の縁故を先に聞け」
「わしは、又八の母じゃが、それがどうぞしたか」
「では、おのれは、西瓜売りの又八の母か」
「何をほざく。他国者と侮って、西瓜売りとはようもいやったの。美作国吉野郷竹山城のあるじ新免宗貫に仕えて郷地百貫、歴乎とした本位田家の子、わしはその母じゃぞ」
耳もかさず、一人が、
「おい、面倒だ」
「どうする?」
「引っ舁げ」
「人質か」
「おふくろとあれば、取りに来ずにはいられまい」
それを聞くと、ばばは、骨ばった体を反らして、蝦蛄のように暴れた。
三
おもしろくないこと夥しい。佐々木小次郎は、不平に腹が膨れていた。