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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
わしの考えは、夢に近い」
「いえ、そんなことはござりませぬ。よい政治は、高い剣の道と、その精神は一つとてまえも考えまする」
「それは誤りはないが、それは理論で、実際でない。学者の部屋の真理は、世俗の中の真理とは必ずしも同一でない」
「では、われわれが究めて行こうとする真理は、実際の世のためには役立ちませんか」
「ばかな」
と、武蔵は憤るが如く、
「この国のあらん限り、世の相はどう変ろうと、剣の道――ますらおの精神の道が――無用な技事になり終ろうか」
「……は」
「だが深く思うと、政治の道は武のみが本ではない。文武二道の大円明の境こそ、無欠の政治があり、世を活かす大道の剣の極致があった。――だから、まだ乳くさいわしなどの夢は夢に過ぎず、もっと自身を、文武二天へ謙譲に仕えて研きをかけねばならぬ。――世を政治する前に、もっともっと、世から教えられて来ねば……」
そういった後で、武蔵はにやにやと笑った。抑えきれない自嘲を洩らすように。
「……そうだ。権之助。硯はないか。硯がなくば、矢立を貸してくれい」
二
何か書面を認めて、
「権之助。大儀ながら、使いに行ってもらいたいが」