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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens

Aozora Bunko

と、ただ眼をみはり、何か思い出の中にいる様子、武蔵と知らぬ仲の人とは思われなかった。

するとこの老尼の息子も、なつかしい人の名でも聞いたかのように寄り添って来て、

「武蔵どのは今、どこにおられますな。その後のご様子は……」

などと、いろいろ訊ねだし、権之助がそれについて、知る限りの消息を話して聞かせると、いちいち母なる老尼と顔を見あわせて、うなずくのであった。

そこで、権之助から今度は、

「――して、貴方様は」

と、訊ねると、

「申しおくれました」

と詫びて、

「わたくしは京の本阿弥の辻に住む光悦という者。また、これは母の妙秀でして、武蔵どのとは六、七年前に、ふとお親しくしていただいたこともあり、何かにつけ、日頃、おうわさ申し上げているものですから」

と光悦は、その頃の思い出ばなし二つ三つ掻いつまんで話した。

光悦の名は、疾く、刀の上において権之助も知っている。また、武蔵との交渉は、その武蔵から草庵の炉べりで聞いたこともある。思いがけぬ所で、思いがけぬ人に会うもの哉。――と権之助も驚いた。

その驚きのうちには、京都でも然るべき家がらの母堂といわれる妙秀尼やまた、本阿弥光悦ともある人の母子が、なんでこの山里の人も訪わぬ伽藍などに来て、しかも寺の雑人すら怠っている山の朽葉などを、竹箒を持って、こんな暗くなるまで掃除