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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
「すみません」
「お店には、手代だの若い者だの、それから船がつくと、水夫や軽子がたくさんに出入りするから、生意気なことをいうと、懲らしめられますよ」
「はい」
「ホホホホ。生意気かと思うと、素直なところもあるね、おまえは」
と、よい玩具にして扱う。
町を曲がると、海のにおいが直に面に打って来た。岸和田の船着場である。この地方の産物を積んだ五百石船がそこについていた。
お鶴は、指さして、
「あれへ乗って帰るんだよ」
と、伊織へ教え、
「あの船だって、うちの持船なんだからね」
と、誇る。
そこらの磯茶屋から、その時彼女たちの姿を見かけて、駈けて来る三、四人があった。船頭や小林屋の手代らしく、
「お帰りなさいまし」
「お待ちしておりました」
と、挙って出迎え、
「生憎と積荷が沢山で、お席も広く取れませんが、彼方へ支度もして置きましたから直ぐにどうぞ」
先に立って、船の内へ導いて行ったが、見れば、艫寄りの一劃に幕をめぐらし、緋毛氈をしき、桃山蒔絵の銚子だの、料理のお重だの、水の上とも思われない、豪奢な小座敷が拵えてある。
四
船は滞りなく、その晩、堺の浦につき、小林の御寮人とお鶴様とは、船が着いた川尻のすぐ向いにある大きな間口の軒へ、