Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
ここにいるッ」
川風が烈しいので、声は届いたか届かなかったか疑われだが、その返辞に代えて、すぐ鉄砲の第二弾が、武蔵の声がした辺りを狙って撃って来た。
もとより武蔵はもうそこに身を置いていなかった。橋桁に添って、九尺もいる所をかえていたが、弾と行き交いに、彼の体はそこから敵のかくれている暗がりへ向って一躍した。
次の弾をこめて、火縄の火を強薬へ点じている間などなかったので、敵の三名は狼狽を極め、
「や。や」
「う。うぬ」
刀を払って、おどって来た武蔵を、三方から迎えたが、それさえ辛くも間に合った姿勢なので、味方と味方の聯繋は取れていない。
武蔵は、三名のなかへ割って入ると、真っ向の者を、大刀で一颯の下に断ち伏せ、左側の男を、左手で抜いた脇差で、横に薙いだ。
一人は逃げ出したが、よほど慌てたとみえて、橋桁の袂へ、盲とんぼのようにぶつかり、そのまま矢矧の大橋を、のめるように駈けて行った。
三
――それから、武蔵も、常の足どりで、ただ欄干に身を添いながら、大橋を渡って行ったが、何の事も起って来ない。
しばらくの間、来る者あれば待つように、身を佇ませていたが、かわったこともなかった。