Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
「……くそ坊主め」
彼方をにらんで、武蔵は、唇を喰いしばった。いつか、無一物などといったのは、絶無の頭脳を――真から空ッぽの頭脳を、さも何かありそうに見せかける坊主常習の似非のことばなのだ。
「ようし、みておれ」
もう恃まぬと思った。世に恃む師があると思ったのが不覚と悔まれもする。自力――以外に道はないのだ。さもあらばあれ、彼も人、自分も人、無数の先哲もみな人間。――もう恃むまい。
ぬッと立った。怒りが立たせたように突っ立った。
「…………」
そしてなお、月の彼方を、睨めつけていたが、ようやく、眸の焔が冷めてくると、眼はおのずから、自分の姿と足もとへ戻って来る。
「……や?」
彼は、その位置のまま、身を巡らした。
円い筋のまん中に、立っている自分を見出したのである。
――棒を。
と、先刻、愚堂がいっていたのが思い出された。その棒の先を地にあてて、何か、自分の周囲に迫ったと思ったが、この円い線を描いていたのか――と初めて今、気がつく。
「何の円?」
武蔵は、その位置から、一寸も動かず考えた。
円――
円――
いくら見ていても、円い線はどこまでも円い。果てなく、屈折なく、窮極なく、迷いなく円い。