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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
「お吟さまには、今、どこにお在でなされますか」
「平田某とやら、名はわすれたが、三日月村の郷士の家にいるそうな」
「ご縁家でございまするか」
「たぶん……そんなことじゃろう。それはともかく、お吟どのがいわっしゃるには、何かと、種々のはなしも積っている。秘かに告げたいこともある。いや何よりは、恋しい、会いたいと、道ばたもわすれて、泣かぬばかり……」
お通もふと、瞼を赤らめた。想う人の姉と聞くからに懐かしいのに、故郷の日の憶い出や何や、急に胸へこみ上げて来たのであろう。
「――が生憎、往来中でな、手紙も書けぬが、ぜひ近いうち、三日月村の平田と尋ねて訪れてくれまいか。此方から行きたいのは山々だがそうもならぬ事情があるので――といわっしゃるのだが」
「では、私に?」
「おう、詳しゅうはいわぬが、武蔵どのからは、時折、便りも来ているそうな」
お通は、そう聞くと、一も二もなく、今からでもと、もう胸にきめていたが、ここへ身を寄せてからは、何かと案じもし、相談相手にもなってくれている乳母へ黙って答えてはと、
「行くか、行けないか、晩までに、ご返辞に伺います」
と、万兵衛には返辞した。