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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
――それをよいことにして、諸国、江戸表にまで出て、悪ざまに世へいい触らし、仇呼ばわりをするのみか、御出世の道を邪げおったな」
「…………」
「まだある。――その執念で、お通さままでを、折あるごとに、追い苦しめた。もうよい程に、非を覚って、故郷へ引籠ったかと思うていたら――なおも、麻屋の万兵衛を手先に、あのお方を、どうかしようと企んでおる」
「…………」
「憎んでも飽きたらぬばばめ。一太刀に斬るのは易いが、この城太郎も、今では浪々の青木丹左が子ではない。父の丹左も、ようやく元の姫路城へ、帰参かなって、この春からは、以前のとおり池田家の藩士。……またぞろ、父の名に、累を及ぼしてはならぬゆえ、生命だけは助けておくが」
城太郎は、前へ出て来た。
助けておくが――とはいったが右手に提げている白い刃は、まだ鞘に返ってはいないのである。
「……?」
ばばは、一歩一歩後へ退がりながら、逃げ出す虚を窺っていた。
四
隙を見たか、ばばは、杉林の小道へと、さっと走りかけたが、やらじと追う城太郎の一跳びに、
「何処へ」
と、その首の根を抑えられ、くわっと口を開くと、
「何しやるっ」
年こそ寄れ、きかない気性が、弾みに出て、振り向きざま、脇差の抜打ちに、城太郎の脾腹を横に払った。