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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
城太郎を斬ってしまえば、お杉ばばを何処へどうして人質にしてあるか、それを知る道がなくなるからであろう。
同様に、城太郎もまた、ここでうるさい郷士らと、血を見ることは避ける考えだった。藩の聞えを思い、父に累を及ぼすまいとするために。
けれど、物の弾みは、そんな常の思慮で支えのつかない所にある。一人と三人との格闘では、当然、一人の方から、憤怒の堰を切ってしまうし、城太郎の血はまた、多分に血気一途でもあった。
相手の三人に、
「この生ぞうめ」
「小癪な」
「これでもかっ」
撲られ、突かれ、足蹴にされてそれへ捩じ伏せられそうになると、
「何をっ」
今度は、彼が、先刻うけた不意打の逆を行って、いきなり脇差を抜くなり、乗しかかっている男の腹部へ突きとおした。
「……うッ。ち!」
梅酢の樽へでも手を突っこんだように、柄手から肩半分まで、朱になると、城太郎の頭には、もう何もない。
「くそっ、貴様もか」
起き上がるなり、また一名の真っ向へ撲り下ろした。骨にぶつかった刀の刃は、横に寝て、斜かいに削げたので、魚の切身ぐらいな肉片が、切っ先から素っ飛んだ。
「わ。や、やったな」
喚いたが、相手は、抜き合すのも間に合わないのである。