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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
「ええ」
「ぜひ、屋敷へは来てください。父と拙者のいる屋敷へ」
「…………」
「父の丹左も、話してみると、お通さんのことは、七宝寺にいた頃のことまで、よく知っていました。……何か知らないが、いちど会いたい、話もしたい、などと申していますから」
お通は、答えなかった。
消えかかる燈芯に、ふと、振顧って、破れ廂から夜空を見上げながら、
「……ア。雨が」
「雨ですって。――あしたは姫路まで歩くのに」
「いいえ、蓑笠さえあれば、秋の雨ぐらいは」
「たんと来なければいいが」
「……オオ、風が」
「閉めましょう」
城太郎は立って、雨戸を引寄せた。急にむし暑く、そしてお通のもつ、女の香が籠る気がした。
「お通さん、よいように、寝て下さい。拙者はこのまま――」
と、木枕を取って、窓の下に、壁へ向って横になった。
「…………」
お通は、まだ起きて、独り雨の音を聞いていた。
「寝ておかないといけないぞ。お通さん、まだ眠らないのか」
眠りつけないらしく、後ろ向きのまま、城太郎はそういって、薄い寝具を、顔まで引っかぶった。
観音
一
雨は蕭々と、破れ廂を打ちつづけている。
風も強くなった。
山村のことである。