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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
彼女の琵琶にも耳澄ました覚えがある。
が、武蔵の知っているその人は初代吉野であって、紹益の妻なる女性は二代吉野なのであった。
花散り花開く。――廓の年月はいとど流れが早い。
あの夜の雪も、あの牡丹の薪の炎も、今は夢かのようである。その時の初代吉野のすがたも、今はどこに、人妻になっているやら、孤独やら、うわさもないし、知る人も絶えてない。
「はやいものですね。初めてお目にかかった頃から思うと、もう七、八年は経っている」
光悦も、船まで歩きながら、ふと呟いたことだった。
「……八年」
武蔵も、転、歳月の思いにたえなかった。――今日の船出が、何となく、人生の一期劃のように思われもして。
さてまた。
その日、彼をここに見送った人々の中には、以上ふたりの旧知を始め、妙心寺の愚堂門下にずっといる本位田又八。京都三条車町の細川邸の侍たち二、三名。
また、烏丸光広卿の名代として供連れの公卿侍の一行。
それから、半年ほどの京都滞在中に、何かと知り合いになった者や、彼が拒んでも拒んでも、彼の人間と剣を慕って、彼を師とよぶ者たちが、それは無慮二、三十名以上もあろうか――何しろ武蔵にとってはやや迷惑すぎるほどな同勢をもって、見送りに加わっている一団もあった。