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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
此段、御直に申し上可とぞんじ候えども、御承引なさるまじく候に付、わざと申しあげず、爰元へ参り居候(中略)
爰元の舟にて、能き時分参り申すべく候間、左様に思し召さるべくそろ。以 上
四月十三日宮本武蔵
佐渡守様
と認めてあった。
「…………」
佐渡は、黙然と、読後の文字をなお見入っていた。
謙虚の美。ゆかしい思い配り。何にしても行届いた返書。と心を打たれている容子だった。
それとまた、佐渡は、昨夜からの自分の焦躁が、この返書に対して、面映ゆくあった。謙虚な心の持主に対して、少しでも疑ったことが自ら恥じられた。
「縫殿介」
「はっ」
「武蔵どのの、この御書面を携えてすぐ、内海孫兵衛丞どのや、その他の衆に、廻状いたして来い」
「承知いたしました」
退がりかけると、襖の陰に控えていた用人が、
「御主人様。御用がおすみ遊ばしたら、今日のお立会のお役目、はやお支度を遊ばしませぬと」
と、うながした。
佐渡は落着いて、
「心得ておる。じゃが、まだ時刻には早かろう」
「お早くはござりまするが、同じく今日のお立会役、岩間角兵衛様にはもはやお船を仕立てられ、今し方、浜をお離れなされましたが」