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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens

Aozora Bunko

それは、ときどき、冷たい波しぶきに吹かれるからではない。

心は、生死を離脱したつもりでも、肉体は、予感する。筋肉が緊まる。ふたつが合致しない。

心よりは、筋肉や毛穴が、それを忘れている時、武蔵の脳裡にも、水と雲の影しかなかった。

「――見えた」

「おお――ようやく、今頃」

船島ではない。そこは彦島の勅使待の浦であった。

約三、四十名の侍が、漁村の浜辺にむらがって、先刻から海上をながめ合っていた。

この者たちは皆、佐々木巌流の門人であり、その大半以上が、細川家の家中であった。

小倉の城下に、高札が立つと直ぐ、当日の船止めの先を越して、島へ渡ってしまったのである。

(万が一にも、師の巌流先生が敗れた時は、武蔵を、生かして島から帰すまいぞ)

と、密かに、盟を結んだ輩が、藩の布令をも無視して、二日も前から、船島へ上がってきょうを待ち構えていた。

だが、今朝になって。

長岡佐渡、岩間角兵衛などの奉行や、また、警備の藩士たちがそこへ上陸するに及んで、すぐ発見され、きびしく不心得を諭されて、船島から隣り島の――彦島の勅使待へと、追い払われてしまったものだった。

三

その日の禁令上、試合に立会う役人側では、そういう処置を取ったものの、しかし、藩士の八分までは、当然、同藩の巌流に勝たせたいと祈っていたし、また、師を思うの余りから