Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens

Aozora Bunko

武蔵野の西郊を相模川の果てまで行くと、厚木の宿から、大山、丹沢などの山々が面に迫って来る。

彼の姿は、そこから先、しばらくのあいだ、どこでどう暮していたか分らない。

文字どおりな蓬頭垢面を持った彼が、約ふた月ほど後、山から里へ下りて来た。何か或る一つの迷いを解くために、山へ籠ったらしかったが、冬山の雪に追われて下りて来た彼のその顔には、山に入る前より苦しげな迷いが刻みこまれていた。

解けないものが次々に彼の心を虐む。一つ解くとまた一つの迷いに逢着する。そしてまったく、剣も心も、空虚になる。

「だめだ」

自分で自分を、時にはまったく、嘆声のもとに、見捨てかける時すらあった。そして、

「いっそ……?」

と、人なみな安逸を想像した。

お通は? すぐ思う。

彼女と共に、安逸をたのしむ心になれば、すぐにでも出来そうな気がするのだ。また、百石や二百石の、身過ぎのための食禄をさがす気になれば、それも何処にでもあると考える。

けれど。顧みて、

――それで不足はないか。

と、自身に問うてみると、彼は決して、そんな生涯の約束を、甘受できなかった。反対に、

「懦夫! 何を迷う」