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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
四
「人は人。あわてずともよい。――伊織、ちょっとこれへ来い」
「はい……御用ですか」
「そちは、男だの」
「え、え」
「いかなることがあっても、泣かぬという自信があるか。どうじゃ」
「泣きませぬ」
「然らば、わしの供をして、船島へ行け。――じゃが、次第に依っては、武蔵どのの骨を拾うて帰るかも知れぬのだぞ。……行くか。……泣かずにいられるか」
「行きます。……きっと、泣かないで」
奥の声をうしろに。
縫殿介は門の外へ駈け出していた。すると、塀の陰から彼を呼ぶ見すぼらしい旅の女があった。
四
「お待ち下さいませ。……長岡様の御家来さま」
女は、子を負っていた。
縫殿介は、気が急いている。しかし、旅の女の風態に、怪しみの眼をみはって、
「何じゃ。お女中」
「ぶしつけではございまするが、かような身なりの者、お玄関へ立つことも憚られまして」
「では、御門前で待っていたのか」
「はい……今日に迫った船島の試合に、きのうから、武蔵様が逃げたとやら……町の噂に聞きましたが、それは本当でございましょうか」
「ば、ばかなこと!」
ゆうべからの鬱憤を、いちどに吐いて、
「左様な武蔵どのか、武蔵どのでないか、辰の刻になれば分る。