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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
嫉妬
一
「この辺でおりましょう」
かなり大きな川の岸へ来たので、万三郎は馬を停めさせておりた、あとでわかったのだが、それは鬼怒川であった。
かれらは川岸の柳に馬をつなぎ、枯草の上に腰をおろした。
「これは相当用心しなければならない」
万三郎は吐息をついた。
「私も境で代官所の下役人に調べられました、江戸から急の布令があったというんですが、これは敵が積極的な行動に出はじめた証拠だと思うんです」
「いちど江戸へ戻りますか」
「斧田さんは戻りたいですか」
「いや私は貴方の御意見に従いますよ」
「じゃあ此処に踏留りましょう」
万三郎は強く云った。
「あの人の安否も知りたいし、なにを措いても紀州家の荷駄をつきとめなければならない、敵の出方がはっきりすれば、こっちも却って工夫がしやすいというものです」
そして彼はふところを押えた。
「軍資金も相当ありますよ」
馬が、二人の脇ですさまじく鼻を鳴らし、前肢で激しく地面を叩いた。
嫉妬
一
その部屋はいつも暗かった。
座敷牢という造りらしい、土蔵の二階の一部を格子で仕切り、方三尺ばかりの戸口には錠が掛っていて、食事その他の用のあるとき以外は決してあけることはなかった。