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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

八

「うまくいったです」

と伝次は囁いた。万三郎が訊いた。

「なかまにはみんな話がついたろうな」

「みんな承知です、これまで話してなかった者にも話しました、よければすぐにでも始めるです」

「藁のある処を教えてくれ」

伝次が出て来た。

それから約半刻、四カ所にある木戸の番士を片づけ、三棟の武器庫へ火をかけた。これは、荒壁造りの庫の窓を毀し、そこから燈油に浸した藁を入れて、合図と共に火を放ったのであるが、三棟のうち谷尻のほうの一棟が、どうしたわけかうまく燃えあがらなかった。

そのとき、若者たちは、みな、六尺棒や、なかには槍などを持って、番士小屋の前に人垣をつくっていた。もちろん、かれらに期待をかけてはいなかった、敵の攻撃力を分散させるだけでよかったのだが、これも思ったより役に立った。

「三郎、こっちのはだめだぞ」

燃えあがらない庫の前で、休之助がそう叫んだ。

他の二棟はうまくいって、もう窓や戸の隙間から煙がふき出し、ちらちらと赤く、焔の色も見えはじめていた。

「やり直して来ましょう」

万三郎は窓下へいった。

すると番士小屋のほうで、わあっと高くどよめきの声があがり、若者たちの崩れたつのが見えた。