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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

五

「見たりしてもいけないか」

「出ちゃあいけねえことになってるであすが、もしなんなら」

と大作が伝次を見た。伝次はそっと小屋の中を眺めまわした。

暗さに馴れた眼で見ると、炉を囲んでいる者のほかに二三人ずつかたまったのが三組ほど、床張りの上で夜具をかぶって寝ていた。

「――でえじょぶだろ」

と伝次が頷いた。

五

「旦那は積下ろしを御覧になりてえですね」

「庫のようすを探りたいんだ」

「そんなら、――」

と大作は万三郎の袖を引いた。

足音を忍ばせて、入口とは反対のほうにある土間の突当りへゆき、非常口とでもいうものだろう、掛金を外して、開き戸を静かにあけた。炉の明りもそこまでは届かないが、大作と伝次がうしろを庇うようにしている。

「気をつけて下せえ」

伝次が云った。

「あんまり長く暇どらねえように頼みます」

「戻ったら爪で叩いて下せえ」

と大作が囁いた。

「おらたち此処で待ってるだから」

万三郎はそっと外へ出た。

柵の内には監視はないが、そこで暫くようすをうかがった。

雲が出たとみえて、月光が明るくなり暗くなりする。この辺も一帯に花崗岩質なので、白っぽい地上に小屋の影が黒くうつっている。