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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

六

「その点なんです」

と万三郎は蔵人のほうへ眼をやった。

六

「この男の話によると」

と万三郎は云った。

「老中から紀伊家に向って、沿岸に異国船の補給港があるという申入れをしたところ、大殿がすぐに査察使を出したというんですが、大殿といえば宰相(徳川治宝)さまでしょう、ところで、話のなかにお屋形というのが出ました」

「お屋形といえば、和歌山に御在城の左近将監(頼興)さまのことだろう」

「その人がくさいんです、もっとその男の口を割らないとわからないが、どうやら朱雀事件の首謀はその人の帷幄にあるらしい、そんなような口ぶりでしたよ」

「それが事実ならなによりだ」

休之助はふと眼をつむり、顔を仰向きにして、なにか祈りでもするように云った。

「万一にも宰相さまであったらと、それがなにより心配だった、しかしお屋形さまであってくれれば助かる、紀伊家五十万石のためにも、天下のためにも、――」

万三郎もちょっと頭を垂れた。

――養子にいった身でも、やっぱり主家となれば大事なんだな。

当然のことではあるが、兄の心のなかにある真実に触れたように思って、万三郎は少しばかり感動した。

「これ以上はあとのことにして、差当り観音谷の始末をつけませんか」