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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

怪刀飛閃

一

とおちづが昂奮して云った。

怪刀飛閃

一

「おい権兵衛さん、茶をもらいたいんだがね、小さい権兵衛さん」

万三郎は戸を叩いて叫んだ。

「うるさい」

戸の向うから声がした。ねぼけたような、もったりした声で、続いて大きな欠伸をするのが聞えた。

「うるさいなんて不人情なことを云うなよ、喉がすっかり渇いているんだ、からからに渇いて喉笛がひりつきそうなんだ、たのむから茶を一杯くれないか」

「うるさいと云ったらうるさい、少しは黙って寝たらどうだ」

「それは寝たいさ、寝たいことはやまやまなんだ、しかしこう喉が渇いていては寝ようにも寝られないんだよ、なあ、頼むよ権兵衛さん、茶を一杯だけ頼むよ」

万三郎は独りでにやにやした。

暗くてその笑い顔は見えないけれども、彼は満足であるし活気に満ちていた。

――手紙はもう届いていた。

檻禁されてほぼ十日め(正確な日はわからなくなっていた)に、ようやく目的を半ば達したのである。

彼の押籠められているのは、石倉の地下にある奥の仕切で、なにを納うために使われたのか、床が張ってあり三方は板壁になっていた。――仕切の隣りには、いつも二人の番士が詰めきりであった。