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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

朱雀帰南

一

「大事がおさまりましたそうで、おめでとうございます」

「――三郎」

と休之助がどなった。

「きさまというやつは」

だが、そこで言葉を切ると、地を蹴たてるように走り去った。万三郎はひらっと手を振り、肩をすくめて云った。

「また怒らしてしまった」

かよがくすくすと笑った。

朱雀帰南

一

休之助たち五人(かよも入れて)が帰ったとき、江戸ではもう事件がきれいに片づいていた。八重が寮へ訪ねて来た翌日の夜半に、小田原河岸の邸内から、徹之助の妻子が脱出し、舟で待っていた村野伊平と添島公之進の手で、首尾よく橋場まで伴れ戻した。

三月四日、――

桃の節句の済んだ直後に、紀伊家から老中へ「左近将監頼興の出府願い」が呈出された。頼興が病気になり、江戸で療治したい、という理由であった。

そのときは(すでに記したとおり)頼興は小田原河岸の邸内に来ており、徹之助の密報によって、ただちに老中松平越中守から紀伊家へ、極秘に通告されたうえ、中納言治宝が自ら小田原河岸へいって頼興を押えていたのであった。

――つまり「出府願い」は、頼興が江戸へ潜入したことを、表沙汰にしないための、老中合議の工作であって、これは同時に「朱雀事件」