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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

七

七

半次はすっかりあがっていた。

抱きついているおちづの、躯も頬も火のように熱い。髪毛や肌の匂いも、いつもとは違うようだ。

これまで二人は、たいていの場合、抱き合って寝た。人の家の物置とか、納屋の中で寝るので、寒さを凌ぐためもあるが、そうしなければ心細く、たよりなかったからである。

それは習慣になり、お互いに少しの不自然さも感じなかった。

去年の秋ごろから、おちづの胸のふくらみが眼立つようになり、手が触ったりするとひどく痛がった。抱き合って眠っていて、ふと寝返るときなど、大きな声で「痛い」と叫ぶようなこともあった。

――そんなら離れて寝なよ。

と半次が云えば、

――いやなこったわ。

おちづはやっぱり抱き合って寝ていた。

その夜まではそうだったが、おちづの告白を聞いたいま、半次は云いようのない不安と、恥ずかしさのために、胸がどきどきし、躯がふるえるようであった。

慥かに、おちづの躯の熱さも、髪や肌の匂いも、これまでとは違っている。これまではそんなではなかった。それはもう彼の馴染んで来た温たかみや匂いとはべつのもののようであった。

「ねえ、わかってくれるわね」