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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
四
また、おちづが世間の娘とは違った生活をして来て、少しでも怪しいと思うことがあると、敏感にそれを感じ取る習慣が身についていたからでもあろう。
――なにか普通じゃないことがある。
おちづはそう直感した。
――自分たちや船宇の人たちへの親切さや、おっとりしたあの人柄の裏に、なにか隠していることがあるに違いない。
そういう疑惑がつよく起こった。
もちろん、それはそれだけのことで、だからどうしようというのでもなかった。
「でもあたしなんかの知ったこっちゃないわ」
と独りで呟いた。
「姐さんやあたしはお世話になってるんだから、なにかあるにしたって知らん顔をしていればいいんだわ」
暫くお内所で、散らかった物を片づけたりしていたが、すぐに、なにもすることがなくなった。升屋には遊び相手もいないし、ぼんやり坐っていられる性質でもない。
「お庭へ出てもいいでしょ」
女中の一人にそう云った。
「木戸のこっちだけよ」
とその女中が注意した。
「木戸から中へ入っちゃだめよ、鳥舎へいってごらんなさい、鳥がみんな眠っているから、それでも見て来るといいわ」
おちづは庭へ出ていった。
鳥舎は木戸の近くにあった。