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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

薄紅梅

一

万三郎は谷に向って、別れを告げるように手を振った。

それから五日めに休之助たちは山の小屋を出立した。

渡辺蔵人とかよを駕籠に乗せ、三人は歩いて、――もちろん順路は危ない、一行は笠間から水戸へ出、そこで江戸へ使いをやって、迎えの来るのを待ったのであった。

薄紅梅

一

おちづは鏡に向っていた。

肌ぬぎをして、白粉を塗りかけたまま、鏡の中の自分を、まじまじと眺めていた。

――これがあたしかしら。

自分が変ったことに、いまさら眼をみはる思いだった。

胸のふくらみは、僅かなあいだに恥ずかしいほど豊かになり、まるで疣くらいの小さな乳首と、その乳首のまわりが、ほのかな鴇色に色づいていた。乳房の中には、まだ少し固いしこりがあって、強く押したりすると痛みを感じるが、それも以前とは違う痛さであった。むず痒いような、じれったくなるような痛さで、ときにわれ知らずぎゅっと押しつけ、そうするとやはり刺すように痛むので、声をあげてとびあがることもあった。

肩から腋へかけてのまるみも、それとわかるほど弾力を帯び、艶が出てきた。

――半ちゃん。

おちづは心の中で呼びかけた。

――あたしこんなに娘らしくなったのよ、あんたに見てもらいたいわ、あんたいまどこにいるの。