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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

つなぎ船

一

つなぎ船

一

「炭はいらねえか」

妙などら声で叫ぶ。

「炭の用はねえか」

天秤棒で前と後に一俵ずつ、炭俵を担いで万三郎は町をゆく。

継ぎはぎだらけの尻切り半纒にどんつく布子を重ね、古股引に草鞋ばきである。頬冠りをした上に穴のあいた萱笠という、まことにいぶせき恰好であった。

「山からじか卸しの炭だ、宝積寺の本場の堅炭だ」

万三郎はやけにどなる。

「炭はいらねえか炭は、炭の用はねえか」

もう五日めである。呼び声もだいぶ馴れてきたが、まだどうにも可笑しくってしようがなかった。

――拾い屋の次が炭売りか。

事情やむを得ないとはいいながら、どちらもぱっとしない商売である。拾い屋のほうは黙って歩いていればよかったが、炭売りには呼び声があるので、馴れないうちは神経がくたびれたし、呼び馴れてくるとこんどは自分で可笑しくなった。

結城は狭い町だし、炭屋は二軒あるので、炭はまだ一俵も売れなかった。

もちろん売れなくっても差支えはない。目的は古木家を探ることにあるのだし、もう下男の一人をうまく捉まえていた。一昨日の午飯のとき、町の飯屋で会ったのだが、べらぼうな酒飲みで、屋敷をぬけだして昼から飲んでいたのである。