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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
六
「かよという女が五人の侍を伴れて、四五日まえに下総のどこやらへ追手に立った」と云うのである。
――花田万三郎のこととなるとかよ女史はまるで狂人だからな。
浪人たちはそう云っていた。
六
「それは慥かですね、万三郎のことになると狂人だと云ったのは」
「はい、そのときお名前を初めて聞いたのですから」
「甲野にいた娘です」
と休之助は兄に云った。
「詳しいことは略しますが、三郎が長崎から出て来るとわかって、甲野の家を出ました、三郎がつなを嫁に欲しいと云って来たとき、自分が三郎の嫁になるのだ、と云っていたそうです、ほかにもごたごたした事がありましたが、今の話のようすでは、慥かに甲野にいたかよに相違ありません」
「しかし、――あの仲間に入るという条件があったのか」
「あるんです、しかもこれはなかなか重要なことですが」
と休之助は云った。
「お浜屋敷の支配に、渡辺蔵人という者がいます、次席で五百八十石の物頭ですが、これが妻を亡くして、かよという娘を後添いに欲しがっていました、非常な執心で、甲野の父はずいぶん困っていましたが、かよはどうしても承知しなかったのです、――ところがこの春、渡辺蔵人は小田原河岸のほうへ首席支配に変りました、かよは他に身寄りのない娘ですから、そこにいる以上は蔵人を頼っていったに相違ありません」