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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
二
「すると三郎はいま、その下男の虎造と飲んでいるわけだな」
「相手はすっかり信用して、そろそろ屋敷の中へ呼ばれそうだということです」
「もうそんな必要はないんだ」
休之助はずけずけと云った。
「必要がないんですって」
「荷駄の内容もわかったし、古木邸から運び出してゆく貯蔵庫の所在も見当がついた、今夜にでも此処をひきはらわなければならないんだ」
「それは本当ですか」
又平はあっけにとられた。
「荷駄の内容も、貯蔵庫の在り場所も、――いったいどうして」
二
休之助も自分のほうの事情を話した。又平は聞いていて、頭がちらくらするようであった。
荷駄のなかみが鉄砲と弾薬だということは、さして驚きはしなかった。なにか武器の類だろうとは、誰もがおよそ推察していたが、追手との関係や、炭焼き小屋での話、山霊の哭き声などに至っては、すっかり胆を抜かれたかたちだった。
「すると、そ、そこに」
と又平は吃った。
「つまりそこに、貯蔵庫があるというわけですね」
「山霊というのは人を近寄らせないための作りごとだ、妖怪退治だと云って、三度も若者たちがでかけてゆき、中でただ一人だけが生きて帰った、その若者が山霊の姿を見ている、つまりその若者の口から、山霊のいることを語らせるために、わざとその者だけ無事に帰らせたのだ」