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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

四

万三郎は坐った。――するとそこへ、合い宿をする男女の旅客が五人ばかり、遠慮しながら入って来た。

四

夜明け前、――

東の空がやや白みを帯びた程度で、あたりはまだ暗く、濃い霧が幕を引いたように猿橋の宿を深く包んでいた。

橋の西の袂に、休之助と兵馬が立っていた。二人とも鉢巻をし、襷をかけ、袴の股立をきゅっと絞っている。草鞋の緒が気になるとみえて、兵馬はしきりに足を踏みしめていた。

万三郎と兵馬の直感は正しかった。

二十余人一団の侍たちは、江戸の紀伊家の者で、甲府で事を起こすために密行する途中であった。

笹屋へ泊ったのは五人であるが、酒に酔った高ごえの話を聞いて、そのことが二人にすぐわかった。

――間違いなし。

そう認めて、二人はすぐに休之助の宿を捜した。

狭い間の宿のことだから、手間はかからない、山口屋という旅籠にいるのをつきとめて、四人で対策を相談した。

山口屋へゆくまえに調べたところ、侍は十二人、あとは中間小者と人足で、荷駄が七頭あり、五頭にはかなり重量のありそうな箱荷が付けてあった。侍たちの中に三人、――これはじかに見たわけではないが、裏金の塗笠をかぶった人物がいて、他の侍たちの態度からみると、相当な身分の人らしい、というはなしであった。