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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
五
「知っている男ですか」
「お浜屋敷の支配だ」
休之助は昂奮していた。元の座に坐ると、いま怒ったことは忘れたように、
「さあ聞こう、話してくれ」
とせきたてた。万三郎はおちついたもので、まずあの二人は帰らせましょうと云い、秀と伝次を呼んだ。
「おまえたち、観音谷へ帰ったら、することはわかっているな」
「へえわかっているです」
「木戸で疑われたらおしまいだぞ、いいか、太夫さまを捜すのに暇取った。太夫さまはもう少し月を眺めると仰しゃっていた、はっきりそう云うんだぞ」
「間違いなくそう云うです」
「それから藁と油だ、油を藁にたっぷり掛けて、武器庫の裏に用意しておけ、――ほかの者たちに知らせるときよほど用心しないと危ないぞ」
「よくわかってるです」
伝次が云った。そしてまた自分に向って念を押すように、
「柵は木戸から南へ二十本めであんすから、どうか旦那も忘れねえで下せえ」
「わかった、早く帰れ」
二人は出ていった。
「さあ話せ、いったいどうしたというんだ」
休之助はせきたてた。万三郎は悠々たるもので、斧田が渡辺蔵人の繩尻を、柱に縛りつけているのを眺めた。
「どうしたんだ三郎、なにをぐずぐずしているんだ、話せというのに話さないのか」