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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
風の街道
一
へ客になってあがった。女中に心付をやって、ちょうど万三郎たちのいる座敷と、向きあった離れにとおり、そこでなりゆきを見ていたのである。万三郎がとび出したとき、助勢に出ようとしたが、石黒半兵衛という難物が現われたので、その騒ぎの鎮まるのを待っていた、ということであった。
「どうもお手数をかけて済みませんでした」
「礼は半次に云って下さい」
兵馬は軽く笑って、
「それで、つなさんの手掛りがつきましたか」
「いやだめでした、あの女は本当に知らないらしいんです、つなのことばかりでなく、肝心なことはあの女はなにも知らないようすでした」
「敵もさる者ですか」
兵馬は唸るように云った。二人は暗い御成り道を、東へ向っていそいだ。
風の街道
一
この世に生きていると、人間はいろいろ思いがけない経験をする。それらは善かれ悪しかれ、好ましいものも好ましからざるものも、人間の成長を助け、人格を向上させるものだそうである。
花田万三郎は長崎から出てきて、まだ僅かな日数しか経たないのに、ぜんぜん想ってもみないような、多岐多端な出来事を経験して、それらがあまりに多岐多端であり、いちどきの経験であるために、すっかり戸惑いをしてしまった。