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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

六

「では喰べながら話すとしよう」

相手はこう云って、蔵人の脇差を持って立とうとした。

「いや、それでは恐縮です」

万三郎もすぐ立とうとした。

「申しつけるのなら私がいってまいりますから、どうぞ」

「なに、ほかに用もあるのだ」

相手は気軽に庭へおりた。

「では提灯を、――」

万三郎がそう云ったけれど、こんどは返辞もせずに、相手は暗い樹立をぬけて去っていった。

――少しへんだな。

相手の足音が聞えなくなったとたんに、万三郎はふとそう思った。

「べつにへんなことはないさ、食事どきだから喰べながら話をする、世間一般どこでもやってるじゃないか」

自分にそう云ってみた。

しかしやっぱり不審であった。蔵人と会うのは重要な用件があるからで、もし食事をするなら終ってからでもいいわけである。それに、見たところ相当な身分の者と思われる人物が、自分で支度を命じにゆくというのはおかしい。

彼は不安になり、おちつかない眼つきで、すばやく周囲を見まわした。

「そうだ、ことによると蕨めしというのが、なにかの符牒だったかもしれないぞ、うん、蕨なんて物が飯に炊きこめるかどうか、――おそらくぐちゃぐちゃのぬるぬるになっちまうだろう、こいつはおかしい」