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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

五

「追手が掛ったわけですね」

「見老津という処で追いつかれまして、――そこでちょうど半次に会ったんですが、いちおう斬りぬけたと思ったとき、鉄砲を射たれましてね、たった一発でしたが、林の背中から胸を射抜いてしまったんです」

そこで兵馬は黙った。

万三郎も黙って眼をつむった。彼は林市郎兵衛をよく知らない、顔つきも覚えていないが、たった一発の弾丸に当った、ということを聞くと、なにかしらそんな不運な影をもっていたように思われて、心が痛んだ。

「――雨のようですね」

兵馬がぽつんと云った。

云われて耳を澄ますと、庇を打つ静かな雨の音が聞えた。

兵馬は寝返りをうった。

「結城のほうはどんなぐあいでしたか」

「仕事はうまくいきましたが」

と万三郎は苦笑した。

「例によって私はへまばかりやって、休之助に怒られどおしでしたよ、そうそう、いつか中谷さんに助けてもらったときのあの女」

「和幸のときのですね」

「あれにすっかり付纒われましてね、あの女はいまわれわれの手に押えてあるんですが、おかげでずいぶん誤解をまねきまして」

兵馬はくすくす笑った。

「――なんですか」

万三郎が訝しそうに訊いた。