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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
二
を外へ出したのであった。
それがちょうど六日めに当る昨日の夕方、ようやく人の手に渡ったのである。相手は少女らしかった、そして石の隙間から、
――この手紙は誰か安心な人に読んでもらって、きっとなんとかしますから。
と云うのを聞いた。
彼は、どこかで聞き覚えのある声だ、と思ったが、それを思いだしている気持のゆとりはなかった。
――しめたしめた、これで役目をはたしたぞ。
と喚きだしたいのをやっと辛抱するばかりであった。
二
それからまる一日、――万三郎は自分のことは考えず兄たちが甲府のほうへ手配するだろう、ということばかり考えていた。
――どうせおれを助けになんか来やあしないさ、なにしろ花田の兄も休さんも第一義で凝り固まってるんだからな。
こう思いこんでいた。
しかし、まる一日経って、日が昏れかかる頃から、ふと一種の予感のようなものを感じた。ことによると助けに来るかもしれない、どうも助けに来そうだ、そんな気持がし始めたのである。
――そうだ、もしかすると、もしかするかもしれないぞ。
そんなことを呟いた。それから騒ぎ始めたのである。兄たちが助けに来るとすれば、番士を疲れさせておくほうがいい、そう気がついたからであった。