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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
五
初めに老人が躊躇したのを、休之助は思いだした。
「私は謀反人ではない」
「わしもそう思うだ」
「詳しい事情は話せないが、いま天下の大乱にもなりかねないような、恐ろしい陰謀を企てている者がある、私たちは少ない人数で、その陰謀を未然に防ぎ、その計画を叩き潰すために奔走しているのだ」
「わしにはむずかしい事はわからねえだ」
老人は云った。
「そんな事は知りてえとも思わねえだが、わしは昔から役人の云うことは信じねえ、役人なんて者が、この世の中にいることさえ、きしょくが悪くってならねえだよ」
五
老人の言葉があまり強いので、休之助はふと気になって訊いた。
「それにはなにかわけがあるのか」
「役人嫌えかね、――ふん、つまらねえお笑いぐさだがね」
五郎兵衛は炉へ薪をくべた。
「わしは十年めえまで、結城の町で糸屋をやってただ、松倉屋といって、五代も続いた糸屋だったし、同商売の中では第一に数えられるほど繁昌していただよ」
結城に古木甚兵衛(読者はすでに御存じである)という豪家があった。主人の甚兵衛は欲の深い性質で、金のためならどんな無法な事もする人間であった。
その甚兵衛は織屋を経営していたが、松倉屋が繁昌するのに眼をつけ、結城家の役人と結託して、松倉屋をとり潰し、その営業権を自分の手に奪ってしまった。