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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

八

万三郎は吃驚して頭をあげた。いつのまにか、そこへつなが来ていたのである。

「そこにいたんですか」

「また夜具も敷かずにおやすみになりはしないかと思って来てみたんですの」

「それで、――私がいるからとはどういう意味ですか」

「御自分で知っていらっしゃる筈でしょう」

とつなが答えた。

「あの晩かよさんがはっきり云っていましたわ、万三郎さまのいらっしゃる処には必ずかよもいますって、蝦夷ヶ島でも筑紫のはてでも、あなたのいらっしゃる処には必ずいますからって、――そうではございませんでしたかしら」

悠くりと丁寧に云い、そして、おやすみあそばせと挨拶して、つなは納戸を出ていった。

万三郎は大きく溜息をついた。

八

夜の十時ごろであった。

起きて身支度をした万三郎は、土間へおりて伝次の側へいった。

若者は縛られた柱に背中で凭れ、足を投げだしたまま震えていた。もちろん眠るどころではあるまい、恐怖と寒さとでがたがた震えながら、充血した眼で、放心したように闇のどこかを見まもっていた。

「おい、伝次とかいったな」

万三郎は彼の前に跼んだ。

「おまえ死ぬのはいやだろう」

「――ええ」

「助けてもらいたいか」