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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

三

用心して屋敷へは近づかなかったが、いちどは裏門まで送ってやったこともあった。

その日「大めし」で会うと、

――きょうでえ釣りにゆこう。

と云いだした。田川という川でたなごが釣れる、それを肴に飲もう、というのである。聞いてみると水戸街道に近いので、早速でかけて来たのであった。

「おらあもう帰るぜ」

辛抱を切らして虎造が云った。

「熱いのをひっかけなけりゃあ死んじまいそうだ、おめえまだ釣ってるか」

三

「そうさな、――」

万三郎は迷うように云った。

――もう十時過ぎであろう、これから荷駄を送るようなこともあるまい。

そう思って竿をあげた。

「帰るとするか」

「おちついてちゃいけねえ、おらあしんじつ凍えちまったぜ」

「釣れねえもんだね」

万三郎は暢びりと云った。

街道の見張りはおもに斧田又平がやっていた。夕方から夜にかけてというので、およそ五時から十時くらいまで見張ればよかった。今夜もどこかで、又平が眼を光らせているに違いない。万三郎も加勢したわけであるが、もう又平もひきあげたろうと思った。

釣り道具をしまって、歩き出すとすぐに、

「きょうでえこっちだ」

と虎造が云った。