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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
五
「事実はいつかわからずにはいないでしょうし、今わたくしたちに大事なのは朱雀調べで、ほかのことにかかわっている暇はないのでございますから」
「わかりました、黙ります」
「どうぞそうお願い致します」
「ええもう、決して弁解なんかしません」
つなはくるっと向き直って、足ばやに坂道をおりていった。眼にあふれてくる涙を、彼に見られたくなかったのであるが、彼はそんなことには気づかない、彼女のうしろ姿の、あまりに冷たく、断乎としているのを眺めながら、
――なんという頭の冷静な娘だろう。
と思い、拳を握って、
「――こん畜生」
と呟いた。誰に対して呟いたのか、つなに対してか、自分に対してか、またこんなことになった事情に対してか、いずれともわからないが、ともかく「畜生」といわずにいられないようであった。
「女というやつは、なんと強情で冷酷で、意地の悪いものなんだろう」
万三郎は唸った。
「勝手にしろだ、おれは一生涯、誰とも結婚なんかしてやらないから、誰ともだ、女なんか勝手にしやあがれだ」
そのとき、彼の頭の上でふいに鶯が鳴きだした。坂道の上に伸びている枯木の枝で、まだうまく鳴けないらしい。