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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

六

「斬れ、みんな斬ってしまえ」

万三郎が叫んだ。

「一人も逃がすな」

叫びながら、崩れたつ列の中を、(刀を振りながら)後尾まで走りぬけ、そこでまたうしろへ振返りざま、一人の役人の脇腹へ一刀、峰打ちをくれて喚いた。

「しめた、もうこっちのものだぞ」

六

じつに颯爽たるものであった。

万三郎自身、颯爽たるものだと思った。片方は田、片方は堀で、人数の多いほうには不利な足場である。峰打ちで二人倒し、堀と泥田へ三人突き落した。

殆んどあっというまのことで、残った役人たちは埃に巻かれながら、道の上下へばらばらと後退した。

「いま加勢が来るから待ってろ」

万三郎はなおそう叫びながら、斧田のところへ走り寄って、すばやく繩を切り(それは単に腰繩であった)自分の脇差を脱って彼に与えた。

「有難う、花田さん」

「走れますか」

「走れますとも」

又平はくいしばった歯の間から答えた。

「ちょっと挫いただけです」

「じゃあ隙があったら逃げて下さい、向うのあの枝道がいいでしょう、私はしっぱらいをやりますから、頼みますよ」

残った役人たちは六人いた。

田と堀へ落ちた三人は、もうあがって来る元気もないらしい。