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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

四

「雪で帰れなくなったのかもしれませんね」

「ばかなことを」

休之助は歩きだしながら、まるで叱りつけるように云った。

「雪の降るくらいでそんな、――あいつの底抜けには呆れてものも云えない」

又平は黙って案内に立った。

なにか云うたびに休之助を怒らせる。黙るよりしようがないと思った。

裏道を廻って古木邸のうしろへ出るつもりだった。そこは吹き曝しで、強い風が雪を叩きつけ、地面からも頻りに粉雪が舞いあがった。田畑や草原のあいだを、細い野道が幾曲りも曲るので、うっかりすると迷いそうであった。そうして、まもなく古木邸だと思われる処へ来ると、その裏門のあたりで、松明の火がちらちら動いているのが見えた。

「へんですね」

又平が首を傾げた。

「あの火は松明らしいが、ちょうど古木家の裏門に当るようですがね」

「あいつ、しくじったな」

休之助は舌打ちをした。

「なんというやつだ」

そして走りだした。

それはちょうど、万三郎がつなを援け起こしたときであった。足首を挫いたらしいつなは、駆けだそうとして低く呻き、抱えている万三郎の手からずり落ちるように、雪の中へ倒れた。

「わたくしに構わず」