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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
二
口の重い徹之助の話を要約すると、彼は身を以て城中を脱出したのであった。
密報を受けた彼は、そのまま廊下へとびだして台所口へいった。しかしそこにはもう手が廻っているらしかった。彼はいちど戻って、風呂舎口から作事方の御小屋の脇をぬけ、三重櫓の蔭に午過ぎまで隠れていた。それから井伊侯の下城するとき、供の中にまぎれ込んで、ようやく城外へのがれ出たのであった。
「そのまま西丸下の上屋敷へゆき、夜になるのを待って、この下屋敷へ隠れることになったのだ」
「では麹町のみなさんは」
麹町六丁目の花田家には、妻の幾代と、五歳になる松之助がいた。むろん徹之助は動くことができない、人を遣ってようすを探ったのであるが、同じ日の夜になって、大目付から役人が出張して来、母子を拘引していったということであった。
「それで私はすぐに休之助へ使いをやったのだ」
と徹之助が云った。
二
「妻子まで捕えるようでは、休之助も危ないと思ったからだ」
「それがまにあったのですね」
「藤兵衛殿といとさんには相済まなかった」
徹之助は眼を伏せた。
「かれらが火を放つなどとは夢にも思わなかったし、休之助も家族ぜんぶで逃げるわけにはいかなかったろう、つなの助かったのは偶然だったが、それでも不幸中の幸いといわなければならない、まことに無残なことをするやつらだ」