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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

七

そう気がつくと、つなは口惜しさのために身が震えた。

「あなたは謀反人たちの味方になっているのね、あなたは今わたくしたちの敵なのね」

「そんなことどっちだっていいでしょ、あたしは万三郎さまのことで頭がいっぱいだわ」

かよは陶然と眼を細めた。

「二人っきりでお酒を飲んだとき、あたしも酔ったしあの方もお酔いになったわ、ずいぶんお酔いになって、ほほほほ、殿方ってみんな同じね、あんな子供っぽいお顔をしていらっしゃるのに、お酔いになると吃驚するほど色っぽいの、お顔が上気して、眼が怖いくらいぎらぎらして、そうして、――もうなにもかも夢中になってしまうらしいわ」

「嘘よ、嘘にきまってるわ」

「あたしがいやですって云うと、あの方はいきなりとびかかって、あたしを抱き竦めておしまいになったわ」

「そんなことまるっきり嘘よ」

「こうやって、――ぎゅうっと」

七

かよは自分の両手で、自分の躯を力いっぱい抱き緊めた。

彼女は自分の言葉で昂奮しはじめた。空想と現実とがごちゃごちゃになったらしい。顔には血がのぼり、眼が潤みを帯び、呼吸が荒くなるにつれて、その豊かな胸が大きく波をうつようであった。