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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
窓は二つあるが、一つは塞いであり、北側の小さな窓からだけ、昼のうち外の光りがさし込んで来た。
それが北側だということは、日光がささないのと、あけて置くといつも風がまともに吹き込むのでわかった。それで、その窓も閉めておかなければ寒いので、部屋の中はいつも暗いのであった。
つなは端然と坐っていた。
そこは暗いし寒かった。板敷の上にうすべりを敷いただけで、坐っていると、板の冷たさが骨へじかに感じられた。
片隅に夜具が一枚あるだけで、ほかにはなに一つない。脆くなった白壁はところどころ剥げていた。太い棟木のむきだしになっている天床からは、黒い煤が繩のように垂れ下っていた。
つなはかなり痩せてみえた。
ひき緊った小さめの顔の、頬がこけ、高い鼻がいっそう高くみえる。肌の色も艶がなく、あのよく澄んだきれいな眼には、殆んど絶望的な苦悩があらわれていた。
七日まえから、つなはそこにそうして坐っているのである。
つなは繰り返し、自分の軽率を恥じていた。
七日まえの午後、彼女はあの荷駄を調べにいったのであった。江戸から送られて来た紀州家の荷駄は、この町のすぐうしろにある豪家で、古木甚兵衛という者の邸内へ運び込まれた。