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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
六
――嫁にもらってもいい。
と休之助に手紙を書いたこともあった。
「貴女のことは、兄からいろいろ聞いていました」
こう云いかけて、しかし、と彼は不審そうに相手を見た。
「しかし貴女は、火事に遭われたんではないのですか」
「わたくしはゆうべ家にいませんでしたの」
つなは口早に云った。
「詳しいことはわたくしもよく存じませんし、今はお話しする暇もございませんけれど、お義兄さまに云いつかって、この品を持って本所のさるお家へいっておりました、たぶん危険なことが迫っているのを知っていらしったのでしょう、それでわたくしだけ助かったのでございます」
「すると、貴女のほかは、みなさん本当に亡くなられたのですか」
「どうでございましょうか」
つなは眼を伏せた。しかしそれは悲しんでいるというふうではなく、もっと大きな感情を抑えているようにみえた。
六
「わたくしにもなにもわかりませんの」
とつなが云った。
「ただ、これは想像なのですけれど、お義兄さまは半年ほどまえから、麹町のお義兄さまと共同で、なにか調べものをしていらっしゃるようでした、たいそう重大な、秘密なお調べもののようで、――それがどんな事なのかは、姉にさえ見当もつかなかったのですが、十日ほどまえからお義兄さまは急にそわそわし始めて、身のまわりをいろいろ片づけたりしていらしったという