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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
その結果、徹之助の希望は拒まれた。
――これまでの調べでは、朱雀事件の中心にともすると紀州家が出てくる、紀州家は越中守の強力な支持者だから、越中守に話すことは「朱雀調べ」そのものが揉消されるか、悪くするとこちらが罪せられるかもしれない。
おそらく非常な弾圧をくうことは確実であろう。というのが直明の意見であった。
けれども探査を進めるためには、どうしてもその基盤となるものが必要だった。問題が問題だから、外様諸侯には絶対に知られてはならない。閣老の中に協力者を固め、探査の範囲を拡げ、行動の自由を助けてもらわなければならなかった。
そこで直明は松平伊豆守を選んだ。
伊豆守信明は長沢松平の正統で、徳川親藩の一だから、越中守定信とも対抗できるし、老中の人望も篤く、将来は老中首座となるべき人であった。
――ともかく会ってみたらどうか。
直明がそうすすめ、その手順をとってくれた。
それから二十日ほど、なんの知らせもなかったのであるが、或る日、直明の家老松下内記が来て、今日二時に中屋敷へゆくように伝えた。
「豆州(信明)さまは風邪のため、数日まえから中屋敷で御静養ちゅうですが、そこでお会いになるから内密でまいられるように、という御内意でございました」