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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

休之助が走せ寄って叫んだ。

上を見ると、崖の中途から上に五人、ばらばらに離れたまま、妙な恰好で崖へへばり付いていた。

「両刀とも捨てろ」

休之助は刀をつきつけた。

転げ落ちた二人は、鼻先へ刀をつきつけられて、起きあがることもできず、はっはっと激しい呼吸をしながら腰の両刀を(鞘のまま)取って投げ出した。

休之助はその刀の鍔下を、力まかせに足で踏みつけた。一本は曲り、三本は折れた。

「動くなよ、動くと斬るぞ」

彼は二人をきめつけ、上にいる五人に向って叫んだ。

「崖の上へ戻れ、さもないとこの二人を斬るぞ、戻れ」

五人は顔を見合せた。

いっしょにうまく駆けおりることができればいいが、ばらばらでは勝ちみがない。相手は抜刀で待っているし、こちらは赭土の崖を駆けおりるのである。躰勢が崩れているからとうてい勝負にはならないだろう。

「戻れ、この二人を斬るぞ」

休之助は刀を振りあげた。

地面に転げている二人は首をちぢめた。休之助はいまにも斬りつけそうな身構えで、もういちど叫んだ。

五人は崖を登り出した。

だがそれは容易なことではなかった。霜柱で土の浮いている急斜面で、登るよりも滑るほうが多い。