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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

六

「おやめなさいと云ったらおやめなさい」

とその声が云った。

「石黒さん、承知しませんよ」

それはかよの声らしかった。その声はさらに高くなり、こっちへもはっきり聞えた。

「みんなおやめなさい、どちらも刀をお引きなさい、――万三郎さまはどこにいらっしゃるの、万三郎さま」

万三郎は困った。

かよの声で、まわりにいた残りの三人は、すばやく刀を引いて退った。すると門のほうから、松明を持った男を先に立たせて、かよがこちらへ近寄って来た。

「ああそこにいらっしゃるのね」

とかよが向うから云った。

六

かよはお納戸色の被布に頭巾を冠って、顔にかかる雪を小扇で除けながら、静かに二人のほうへ寄って来た。

そのときはもう、休之助と斧田が走せつけて、つなを左右から庇っていたし、かよのうしろへは、石黒半兵衛と七八人の者が来て、かよを護るように半円を描いていた。

「やっぱり万三郎さまは情があるわね」

とかよは周囲に人がいないかのように、狎れ狎れとあまえた口ぶりで云った。

「あたしそう思っていたのよ、あなたはきっと来る、つなさんを助けにきっと来るに違いないって、――でもこんな下手なやり方ってないわ、どうしてあたしにそう仰しゃらなかったんですの」