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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
四
女はまた万三郎を睨んだ。
四
ひどい方だと、女が万三郎を睨んだとき、わざとのように足音をさせて、――それがこういう家の習慣らしい――女中があがって来た。
「お客さまにお手紙でございます」
女中はこういって廊下に膝をついた。
「手紙っておれにか」
「はい、お使いの方が持ってみえました」
女中が封筒を出すのを見て、つなと名乗る女が手を伸ばした。しかし、それより早く万三郎が立っていって受取った。
「使いというのは男か女か」
「子供さんでございました」
「待っているのか」
「さあどうでしょうか、お帰りになったように思いますけれど」
万三郎は女中をさがらせ、立ったままで手紙の封をひらいた。
女は横眼で見ていた。
手紙の文句は簡単であった。「深川はまぐり町、井伊家下屋敷、河原中也といって訪ねて来い、徹」それだけである、が、「徹」という一字で、麹町の兄から来たものだということがわかった。
「どこからのお手紙ですの」
女が問いかけた。万三郎は手紙をこまかくひき裂き、それをさらに千切りながら元の処へ戻って坐った。
「どこから、――というほどのものじゃありません、ついちょっとした、――つまらぬ友人からですよ」