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ふうりゅうたいへいき

風流太平記

山本 周五郎

「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页

青空文庫

「それはおめえ、あれだよ、三島は力があるからだよ」

半次はおちづの背中を撫でた。

「なにしろあいつは相撲くずれなんだから」

「いいえ違う、違うのよ半ちゃん、まえのあたしなら三島なんぞ血だらけにしてやったわ、できなかったのはあたしのせいなのよ」

「おれにゃあてんで、わけがわからねえ」

「あたしの躯のせいなのよ」

おちづは消えそうな声で云った。泣きじゃくりをしながら、両手でぎゅっと半次の膝を抱え、そして涙で濡れた頬を、その膝へすり寄せた。

「三島のやつが腕を巻いたとき、この胸のお乳のところが痛かった。とびあがるほど痛かったわ」

「そんな話よせよ」

「いいえ聞いて、――半ちゃんには話さずにいられないの、話してしまわなければ頭がへんになりそうなのよ」

おちづはさらに身をすり寄せた。

「頭の中ではあたし、この二人殺してやろうと思ったわ、でも躯が自由にならない、お乳のところのとびあがるほど痛いのが、頭から足の先まで響いて、身動きさえできなくなったの、あたし口惜しかった、そんなになった自分の躯が、口惜しくって憎らしくって、いまでもひっちゃぶいてやりたいくらいだわ」

「ばかなことを云うなよ」