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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
四
四
伝次と万三郎は、三棟並んだ丸太小屋の、奥にある一棟へと入っていった。
それは幅三間に奥行十間ばかりの細長い建物で、中央に一間の土間が通じ、左右が三尺ほどの床張りになっていた。両側は板壁で、棚が造付けてあり、おそらく挙兵のばあいに士卒の宿舎になるのだろう、――いまはそこにいる連中の持物が置いてあった。
長い土間のひとところが、二間四方くらい広くなっており、炉に火が燃え、自在鍵で大きな湯沸が懸けてあった。
燈火がないので、建物の内部は暗く、炉の火だけで用を便ずるらしい。その炉をかこんで、五人ほどの若者たちが、黙って影のように跼んでいた。
伝次は万三郎を促してかれらのほうへ近寄ってゆき、中の一人の肩を叩いた。
その男はふり返ったが、すぐに、傍らの二人になにか合図をした。つまり見張りの交代であろう、その二人は立って、小屋から出ていった。万三郎はこれを見ていて、
――これが大作という男だな。
と推察した。
伝次が「小頭」と云ったところから考えると、彼はひと組の指図をするらしい。交代の二人が出てゆくとすぐ彼は伝次と万三郎とを、奥のほうへ伴れていった。
そこまでこぎつけるあいだ、じつをいうと万三郎は腋の下に汗をかいていた。