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ふうりゅうたいへいき
風流太平記
山本 周五郎
「四国新聞」1952(昭和27)年12月12日~1953(昭和28)年7月13日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 244,473 字 · 487 页
「そして行方知れずですか」
「行方が知れぬばかりではない、かれらものるかそるかで松平伊豆のふところへとびこんだ」
こちらで聞いていながら、万三郎はわれ知らず微笑し片方の拳で空を打った。
――やりましたか、兄さん。
心のなかでそう叫んだ。
「それがどうしたんです」
かよが反問した。
「伊豆さまはおろか御老中が出たって、こちらは紀伊家、びくともするものじゃあないでしょう」
「ところがさすが豆州侯だ、直接この問題には触れず、異国船が近海に出没する、沿岸の防備を固めるようにと白川侯に強硬な進言をした」
「それだけですか」
「それだけさ」
蔵人はふくべを置いた。
「それで充分だし、最も辛辣な一札だ、豆州侯の進言には、紀州一帯の沿岸が覘われていること、某地には現に異国船の補給港があるということまで述べられていたという、そこで、――大殿から査察の使者が出されたくらいだ」
「大殿というのは何誰ですの」
「な、なに、それは」
蔵人は失言したらしい、ひどく狼狽したようすで、いきなりかよの手を掴んだ。
「あれ乱暴な、こぼれますわ」
かよは盃を持っていたので、こう云いながら身をひこうとした。